1月26日[金] 〈YIDFF 2017 アンコール2:自我との奇妙な恋〉
2017年の映画祭で上映されたインターナショナル・コンペティション作品から選りすぐりのものを上映する金曜上映会アンコールシリーズの2回目です。今回はエスター・グールド監督作品『自我との奇妙な恋』を上映します!
『自我との奇妙な恋』 14:00- 19:00-(2回上映)
山形国際ドキュメンタリー映画祭 2017 インターナショナル・コンペティション上映作品
監督:エスター・グールド/オランダ/2015/97分
作品紹介:
自分に確固たる自信を持つ姉は、妹にとって常に眩しく憧れの存在だった。だが彼女のその過剰なまでの自尊心、自己愛、あるべき自己像への執着が、その人生を徐々に狂わせていく。妹である監督は、姉ローウェンの自意識がどのようなものだったのかを知るため、彼女と交わした言葉をたどり、一方で人生のそれぞれの段階を生きる自信に満ちた女性たちの心のうちに分け入る。他人が羨むような華麗な人生を送ることにますます価値が置かれ、実際の「自分」とのずれに苦しむ現代人の生きづらさ、社会生活の息苦しさを切実に描き出す私的エッセイ。
監督のことば:
私が「エゴ・ドキュメンタリー」を作ろうとは、思ってもみなかった。しかし、自信にあふれていたはずの姉ローワンが2007年に自殺してからというもの、私は自己愛について、見られたい評価されたいという欲求についての物語を語る必要があると強く考えるようになっていた。自分の憧れていたものーーローワンは私の若い頃のアイドルだったーーが何だったのかを理解したかった、揺れ動く自我の綱渡りをめぐる映画を作りたかったのだ。自己愛のかたまりのように見えた姉に、どうして自殺などということができたのだろうか?
本作の出発点は、私自身が自我の肥大した人たちに好感を抱いている、ということにある。私の周囲にはいつも、個性豊かで自分の意見を遠慮なく言うような人たちがいた。この視点から映画を撮れば、ナルシシズムという主題に新たな光を当てることができるのではないかーー私はそのように考えたのだ。ナルシシズムの概念は、多くの場合、文化的・社会的な問題として記述されている。だが、私にしてみればそれは理論的な問題ではない。ナルシシズムが人間の原動力となることを、私はよく知っている。
私はこの物語を現代の神話として、『エヴリマン』のような寓話として語ろうとした。ナルシスの神話が語るのは、あまりに強い自己愛は、結局は淋しいことと同じであるがゆえに危険である、という教訓である。この映画は「パーティーは沈黙を隠せない」という言葉で幕を閉じる。これはヴァージニア・ウルフのある一文をもじったものだが、この作家もまたーー私の姉ローワンと同じようにーー、一方では知的な刺激や大都市での生活への渇望を抱え、他方で内面の平穏や帰属意識を求めるという、二重の想いに引き裂かれていたのである。
私が姉に抱いていたイメージにぴったりなのはーー今ならそれが理解できるがーー、夢を見続けようとするための自己構築であり、不屈の努力である。同じように、この映画において私の姉の代弁者となる人物たちもまた、自分のアイデンティティを構築している、つまりは自分自身の人生を「演じて」いる。願わくは、この映画が鏡のように作用して、それを観た人たちが、私たちは全員ーー多かれ少なかれーー「かまってほしいナルシシスト」であるという事実に向き合うきっかけになってくれたらと思う。これは、私たちがなぜ成功や名声やスポットライトに魅せられてしまうのかを理解しようとする試みなのだ。
エスター・グールド
[会場]山形ドキュメンタリーフィルムライブラリー試写室
[料金]鑑賞会員無料(入会金・年会費無料)
[主催]認定NPO法人 山形国際ドキュメンタリー映画祭
[問い合わせ]電話:023-666-4480 e-mail:info@yidff.jp