6月28日の金曜上映会〈YIDFF 2017 アンコール 15:航跡〉

前回の山形国際ドキュメンタリー映画祭で上映された作品から選りすぐりをお届けするアンコールシリーズ第15弾。今回はジョン・ジャンヴィト監督の『航跡(スービック海軍基地)』です。1991年にフィリピンに返還された、ルソン島スービック湾の米海軍基地。長く米軍管理下にあった湾周辺は、返還後も深刻な環境汚染被害をもたらし続けていました。長い作品ですが、苦難にあえぐ人々の声にじっくりと耳を傾け、植民地支配とその弾圧の歴史を静かに告発する傑作です。ぜひ、前後編合わせて、ご体感ください。

『航跡(スービック海軍基地)』 14:00-(1回上映)

『航跡(スービック海軍基地)』

山形国際ドキュメンタリー映画祭 2017 インターナショナル・コンペティション上映作品

監督:ジョン・ジャンヴィト/アメリカ、フィリピン/2015/前編135分+後編132分

作品紹介:

ルソン島スービック湾にあった米海軍基地は、1991年のフィリピン上院決議に基づき、フィリピンに返還された。しかし、長く米軍管理下にあった湾周辺は、基地返還後も残留化学物質や重金属類、石綿、PCBなどに起因する深刻な環境汚染被害をもたらし続けている。YIDFF 2011上映の『飛行機雲(クラーク空軍基地)』に続く本作は、10年以上に及ぶ調査により、公害に苦しむ住民の実態をまざまざと描き出すとともに、住民たちを支援し、被害を告発するNGOの活動を共感をもって追いかける。スペイン、アメリカによる植民地支配の下での人々の苦難と抵抗、弾圧の歴史を凝視し、人々の声に耳を傾ける稀有な映像体験。

 

『航跡(スービック海軍基地)』

監督のことば:

2006年夏、私はボストンを飛び立ち、初めてマニラを訪れた。渡航の目的は、劇映画のための取材だった。映画のごく短い一部を、フィリピンで撮ろうと考えていたからだ。しかし、現地に着いて最初の数日で経験したことをきっかけに、フィクションを撮るという計画は完全に消えた。それから私は、米軍基地の跡地で暮らす多くの人々が今も直面している苦難を世界に伝えるため、長年にわたる作業に取り掛かることとなった。フィリピンのクラーク空軍基地とスービック海軍基地があった周辺では、汚染物質による環境破壊が現在も終わっていない。

この『航跡(スービック海軍基地)』は、ドキュメンタリー二部作『For Example, The Philippines(たとえばフィリピンでは)』の後編にあたる。前編の『飛行機雲(クラーク空軍基地)』は2010年に公開された。二本合わせて9時間に及ぶこのドキュメンタリーは、米軍基地の跡地における環境汚染問題を軸に、歴史の忘却、植民地支配、野放しの軍国主義がもたらす結果といった問題を考察している。シネマ・ヴェリテの手法と、フィリピン人被害者やその家族、環境活動家、地域の活動家に実際にインタビューした映像を織り交ぜつつ、米比戦争の時代の古い写真、パルチザンの歌、歴史資料、風景写真を組み合わせたふたつの映画は、いずれも、この人道・環境危機の実態と、その解決策の複雑さが理解できるような作品を目指している。

ジョン・ジャンヴィト

 

[会場]山形ドキュメンタリーフィルムライブラリー試写室
[料金]鑑賞会員無料(入会金・年会費無料)
[主催]認定NPO法人 山形国際ドキュメンタリー映画祭
[問い合わせ]電話:023-666-4480 e-mail:info@yidff.jp