本日午前をもって、イラン特集「リアリティとリアリズム:イラン60s-80s」の上映が終了となりました。各回とも200人前後の観客で賑わい、10月14日の『女性刑務所』『女性区域』『テヘランはイランの首都である』『雨が降った夜』の上映は、アミール・ナデリ監督のトークもあり満席に。続くアミール・ナデリ監督作品『水、風、砂』でも上映後に質疑応答が行われ、活況を呈しました。その質疑の様子を一部紹介します。
本作『水、風、砂』で少年の経験を通じ〈人生〉について説明したかったと言うナデリ監督。「私はとにかく負けることが好き。負けるから次頑張ろうと思えるし、そこから得るものがある」と語ります。故郷の湖が干上がったことを聞き、家族を助けるために帰郷する少年。しかし家族を見つけることができず、行く先々で出会う人々とのエピソードが重ねられていきます。見渡す限りの砂の大地で、水がないという極限状態。風は容赦なく吹き荒れます。それはまさに『水、風、砂』。物語のラストに待ち構えるものが、見る者を惹き付けて止みません。
撮影は140日間行われましたが、とても過酷なものだったそうです。「私は撮影に際しスタッフの募集をする時、恋人や妻、家族がいない人を条件として募集しました。なぜなら本当に生きて帰れるのかが分からないほど過酷な撮影だったからです。実際病気にもなったし、倒れたりもしました。しかし最後まで映画を撮り続けました」。
日本が大好きだというナデリ監督は、最後にこう語ってくれました。
「山形国際ドキュメンタリー映画祭は『監督をつくる』映画祭です。これはとても珍しい。この映画祭を訪れ、実際に作品を作り、次は自分が作品を持ってくるという人は多いと思います。また、私はいつも自分の作品を誰かに捧げたいと考えています。だからこの作品は、今も外で働いている映画祭スタッフのヤノさんに捧げたいです。さあ、そろそろ時間オーバーですね!これで終わりです!カット!」
変わらずパワフルなナデリ節に、会場は笑いに包まれていました。