山形市中央公民館6Fと山形市民会館大ホールで上映されるインターナショナル・コンペティション作品では、10作品の監督において、上映後の質疑応答が予定されています。そして質疑後には、山形市中央公民館では4Fのギャラリースペースにて、山形市民会館ではロビーにて、それぞれさらにトーク時間が設けられており、例年作品に対する熱意ある質問が飛び交います。
10月11日の『光に生きるーロビー・ミューラー』上映&質疑終了後にもギャラリートークが開催され、クレア・パイマン監督の作品づくりに対する質問が様々な角度から寄せられました。そのやりとりの一部をご紹介します。
ーー監督が「ロビー・ミューラーとはどのような人か」と聞かれたらなんと説明しますか?
パイマン:“とても正直な人”と答えます。撮影監督にありがちなマッチョなところはなく、プライベートでも仕事でも上下関係を嫌う人でした。例えば、私が「撮影監督を目指しているからアシスタントはやらない」と話した時にも、ロビーは同じ目線で語り合ってくれました。本当に、自分の信じる真実に対して正直な人です。
ーー作中のロビーの言葉に「撮影でもっとも重要なのは光だ」とありましたが、監督の光に対する、特に白黒映画においての光に対する考え方は?
パイマン:衣装、映画のムード、コントラストにおいて、光は非常に重要なものであると考えています。カラーは情報を与えすぎて本質的なものから目をそらさせることになるため、ミューラーは『ダウン・バイ・ロー』(1986年)では、あえてモノクロにしています。
ーー編集する上で難しかったことは?
パイマン:はじめから「ロビーはこんな人だった」と見せるより、観客一人ひとりに彼の人物像をつくり出してもらえるような編集にしたかった。だから例えば、ジム・ジャームッシュの「遊び心のある人だった」というコメントのあとにロビーの姿を映すことはやめました。証拠を提示するものではない、ということを作品をつくるなかで重視しました。
ーーロビーから学んだことはどんなことだったのでしょうか?
パイマン:真実に忠実であること。映画アカデミーを卒業したての頃、男性よりも仕事ができるようにしなければと焦りを感じていました。けれどもロビーは「君が君のままであることを受け入れてくれる監督に出会えるまで、妥協しないほうがいいよ」とアドバイスをくれた。それからというもの、私は自分が感じたことを仕事に投入できるようになりました。そのことをとても幸せに思います。