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【レポート】YIDFF 2019ボランティア交流企画「Fish! Fish! Film! 〜旬を味わうお魚料理教室〜」

今年で30周年を迎える山形国際ドキュメンタリー映画祭。アジア最大級のドキュメンタリー映画の祭典は、2年に1度のヤマガタを楽しみにしてくださる全国の映画ファン、応援してくださる地域の人々、そして県内外から集まるボランティアの方々に支えられてきました。

映画祭の最前線で活躍するボランティアの数は、毎年300名以上。今年もすでにベテランから高校生まで多くの方々に登録いただいています。

10月10日から始まる映画祭本番まで2ヶ月と迫った8月某日、現場をともにつくるボランティアのみなさんと親睦を深めるとともに、地元山形の食文化を学び国内外から訪れるゲスト・観客を迎える準備をするための交流イベントが行われました。

その名も…

Fish! Fish! Film! 〜旬を味わうお魚料理教室〜

地元のお魚の美味しさや地域に根付く食文化を伝える活動をしている「庄内浜文化伝道師協会」さんから講師を派遣していただき、旬のお魚をみんなでさばいて食べる料理教室と相成りました。

集合は朝の10時。参加者は受け付けをすませ、エプロンを身につけます。

まずは講師による華麗な実演からスタート!

 

思わず目を引くプロの技。講師用の調理台の上部には鏡があり、手元もよく見えます。

講師がメインの食材に選んだのは、スルメイカ。新鮮なイカの見分け方や調理法などを説明しつつ、手際よく、あっというまにさばいてゆきます。

 

熟練の料理人の手にかかるとあっというまにきれいな切り身に。この後、皮をはぎます。

プロの技にほれぼれする一方で、「わたしにもできるかなー」と不安の声も聞こえてきましたが、なにはともあれ実践です。それぞれの調理台に戻って早速イカをつかみます。

 

流水にさらしながらワタと身を切り離します。

ちなみに参加者は受け付けの際にクジを引き、クチボソガレイ、バイガイ、マトウダイ、イシモズクの4班に分かれました。どれも真夏に旬を迎える庄内の味覚にちなんだグループ名です。

 

この班は…小さいけれどうまみのつまったバイガイ!

映画祭30年の歴史を知り尽くしたベテランさんから、今年が映画祭初参加という高校生まで、わきあいあいと調理を進めます。

 

皮を剥いだら身を二つに切り分け、半分は糸造り、もう半分は鹿の子造りに。

実際に調理にとりかかると包丁の入れ方などわからないことがたくさん出てきますが、講師の方々が各班を回って丁寧に指導してくださるので安心です。

 

飾り切りしたイカをさっと湯がくため、コンロでは鍋にお湯を沸かしながら(80度くらいがベストとのこと)。

イカの身はカルパッチョに。ワタとゲソは味噌で煮て、あますとこなく「ワタ煮」に。

参加者がイカを調理する間に、講師の方は別の調理台で大きな真鯛を丸2匹(!)捌いてサク取りしてくれました。
身はサクの状態で湯引きして、各班で包丁を入れてお刺身に。アラは大鍋でうしお汁に。

 

きれいに切れました!

時計の針が正午を打つ頃、あちこちから「できたー!」の声が聞こえてきます。盛り付けは班によって個性が出ますね。

 

完成!! 左から時計回りに:真鯛のお刺身、スルメイカのわた煮、カルパッチョ、うしお汁。ごはんは雪若丸。(マトウダイ班)

お腹がすいたところで、講師も参加者もみんなで「いただきます!」。学校給食を思い出した大人たちも多いはず。

というわけでいよいよ実食!

いただきまーす!!!

新鮮なお魚料理に舌鼓を打ちながら、魚のことや映画のこと、おしゃべりにも花を咲かせます。

ヘルシーで美味しいお魚に身も心も満たされたころで「ごちそうさま」。

食後はきれいに後片付けをして記念撮影の時間。

 

手元には班分けに使ったお魚の写真、そしてできあったばかりの山形国際ドキュメンタリー映画祭2019プログラムチラシ! ベニバナが鮮やかです。

YIDFF2019ボランティア交流企画はこうして(お腹いっぱいのうちに)終了したのでした。

同じ山形県内とはいえ内陸では味わう機会の少ない庄内の魚介の魅力を知り、地域に伝わる食文化の奥深さを知りました。

「次はカニ?」「カンダラも食べたいね」などなど、早くも次回開催を期待する声も。

暑い中ご参加いただいたボランティアのみなさま、はるばる庄内からお越しいただいた文化伝道師協会のみなさま、本当にありがとうございました!

おわりに

世界最先端の映像作品が一堂に会し、作品と観客、作り手と作り手、さまざまな出会いと対話が生まれる2年に1度の映画の祭典。その現場を作るボランティアの方々のあたたかなおもてなしは、毎度国内外から訪れるゲストから絶賛されています。

山形国際ドキュメンタリー映画祭2019は10月10日から18日まで8日間の開催。ボランティアはまだまだ募集中です!

これまで行われたボランティア説明会を逃してしまったという方も、ご興味ありましたら映画祭事務局までお気軽にお問い合わせください(東京で行われる8月28日の説明会が今年最後となります)。

今後、9月に入ると会場・市民賞、ゲストサポーター、広報などのセクションに分かれてミーティングを重ね、いよいよ10月の映画祭本番を迎えることになります。

さてさて、今年はどんな映画と人との出会いが待っているのか。

残り2ヶ月と迫った山形国際ドキュメンタリー映画祭2019、どうぞお楽しみに!

YIDFF 2019最新情報:
http://www.yidff.jp/2019/2019.html#program

YIDFF 2019ボランティアについて:
http://www.yidff.jp/2019/info/19vol.html

庄内浜文化伝道師講座について:
https://www.shonai-hama.net

(文責:山形映画祭事務局)

【山形国際ドキュメンタリー映画祭 2019】アジア千波万波部門21作品ラインアップ決定!

インターナショナル・コンペティション作品に続き、アジア千波万波部門で上映する21作品がこのたび決定しました。アジア千波万波部門では、2018年9月1日より2019年5月15日(消印有効)の期間で作品募集を行い、68の国と地域から943本の作品が寄せられました。

当部門は、1989年の第1回開催当時、ドキュメンタリー映画に焦点をあてた映画祭がアジアで初めて開催されるに至ったものの、アジア地域からの作品がほとんど見当たらなかったことに端を発し、アジアのドキュメンタリー作家を応援し、発表の場を生み出すことを目的とするコンペ部門として93年に設けられました(当時「アジアプログラム」)。
これまで、カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した河瀬直美監督やアピチャッポン・ウィーラセタクン監督ほか、アジア千波万波部門での上映をきっかけに、国際映画祭の舞台へと巣立っていく作家が後を絶ちません。
粗削りでもエネルギーに満ちた作品が集う熱気ある人気プログラムの、今年のラインアップを紹介します。

 

【山形国際ドキュメンタリー映画祭 2019】アジア千波万波部門21作品

『アナトリア・トリップ』 Anatolian Trip

監督:デニス・トルトゥム、ジャン・エルキナジ
Deniz Tortum, Can Eskinazi
トルコ / 2018 / 114分

は2014年大統領選前夜。イスタンブールを出発し、アナトリアを周る若者バンドが、土地の人たちと出会いながら音楽も旅も即興で進むロード・トリップ。

 

『夏が語ること』 And What is the Summer Saying

監督:パヤル・カパーリヤー
Payal Kapadia
インド / 2018 / 23分

男は蜂蜜を採りに森に入る。木々の葉をそよがせる風が、村のハンモックを揺らす。耳をすませば、失われた愛についての女たちのささやきが聞こえる。

 

『1931年、タユグの灰と亡霊』 The Ashes and Ghosts of Tayug 1931

監督:クリストファー・ゴズム
Christopher Gozum
フィリピン / 2017 / 115分

若くして農民蜂起を率いたペドロ・カロサ。サイレント、フィクション、ドキュメンタリー、交錯する映画表現が忘れられた英雄の精神の旅路を映し出す。

 

『そして私は歩く』 At Home Walking

監督:ラジューラ・シャー
Rajula Shah
インド / 2019 / 114分

現代インドの遊牧民や巡礼者の映像に、吟遊詩人の音楽と、詩的なモノローグが流れる。歩くことを瞑想になぞらえて、心の旅を映像化した実験的作品。

 

『山の医療団』 Beyond the Salween River

監督:ジジ・ベラルディ
Gigi Berardi
ビルマ、ヴェトナム、タイ / 2019 / 65分

道なき道を進み、紛争で孤立した少数民族の居住地域に医療を届ける現地主導のプロジェクト・チーム。村の若者たちも自ら学んだことを背負い旅立ってゆく。

 

『セノーテ』 Cenote

監督:小田香
Oda Kaori
日本、メキシコ / 2019 / 75分

古代マヤで現生と黄泉を結ぶと言われる泉セノーテをめぐって交差する人々の今と昔。光と闇の魅惑の映像に遠い記憶がこだまする。『鉱』(YIDFF 2015)監督新作。

 

『消された存在、__立ち上る不在』 Erased,___Ascent of the Invisible

監督:ガッサン・ハルワニ
Ghassan Halwani
レバノン / 2018 / 76分

35年前、行方不明になったある男の面影。内戦後は名もない死者として片付けられてしまった多数の行方不明者という個の存在の不在を現在に探し、刻む。

 

『エクソダス』 Exodus

監督:バフマン・キアロスタミ
Bahman Kiarostami
イラン / 2019 / 80分

アフガニスタンへの帰還を望み国境の出国管理施設に押し寄せる出稼ぎ労働者たち。家族や仕事、それぞれに事情を抱えた人々が織りなすレゲェ調「出イラン記」。

 

『愛を超えて、思いを胸に』 A Feeling Greater Than Love

監督:メアリ・ジルマナス・サバ
Mary Jirmanus Saba
レバノン / 2017 / 93分

歴史に埋もれた1970年代レバノンの工場労働者らによる労働/政治運動。社会を変えようとした当時の関係者の話や多彩なフッテージから民衆革命を掘り起こし、息を吹き込む。

 

『気高く、我が道を』 The Gracefully

監督:アラシュ・エスハギ
Arash Eshaghi
イラン / 2018 / 64分

若い頃、祭りなどで女装の踊り子として人気を博した80歳の男性。革命後に踊りを禁止され牛飼いの農夫として暮らすいまも、踊る喜びを求め続ける姿。

 

『駆け込み小屋』 Hut

監督:蘇育賢(スー・ユーシェン)
So Yo Hen
台湾 / 2018 / 54分

台湾某所にある小屋にひとり、またひとりと逃げ込んできては身の上話を始めるインドネシア人労働者。やがて小屋は人と会話で溢れかえり爆発寸前に…。

 

『見えない役者たち』 Invisible Actors

監督:チェ・ヒョンシク
Chae Hyeong-sik
韓国 / 2018 / 122 分

ゾンビ役の練習をする4人の役者。自らでドキュメンタリー演劇を作るという設定、議論の過程、日常という枠組みを取り込みながら、同時に映画を作る試み。

 

『海辺の王国で』 In Thy Kingdom by the Sea

監督:慶野優太郎
Keino Yutaro
ポーランド、日本 / 2018 / 23分

列車で飛行機で車で一路港へ。そこには、船乗り、漁師、各国から出稼ぎに来ている男たち、海軍に学生…。海に関わる様々な人生がスケッチされる。

 

『ノー・データ・プラン』 No Data Plan

監督:ミコ・レベレザ
Miko Revereza
フィリピン、アメリカ / 2018 / 70分

「母さんは2つの電話を使っている。」監督がロスから列車でNYへ向かう間の映画という旅。『ドロガ!』『ディスインテグレーション 93-96』(YIDFF 2017)監督新作。

 

『非正規家族』 Temporary

監督:許慧如(シュウ・ホイルー)
Hsu Hui-ju
台湾 / 2017 / 25分

廃墟になった工場跡で、非正規雇用の青年と年配の男女の3人が清掃し、テーブルを作って飲食する、家族もどきの不思議な空間。『雑菜記』(YIDFF 2003)の監督新作。

 

『あの雲が晴れなくても』 That Cloud Never Left

監督:ヤシャスウィーニー・ラグナンダン
Yashaswini Raghunandan
インド / 2019 / 65分

ここからそう遠くないある村の話。赤いルビーを探す子どもたちと、手づくりのフィルムのおもちゃ。村も星も子どもたちも回りながら映画になってゆく。

 

『私の家は眠りの中に』 This is My House, Come the Sleeping

監督:ハラマン・パプア
Halaman Papua
インドネシア / 2019 / 90分

その男は、毎日当たりクジの番号を組み合わせている。平穏そうな生活の中には、故郷の村を追われた惨劇の記憶とパプアの歴史がうっすらと漂っている。

 

『ここへ来た道』 Through the Border

監督:張齊育(テオ・チーユー)
Teo Qi Yu
シンガポール / 2018 / 29分

がんが見つかり余命6ヶ月を宣告された祖父。かの地中国に残した想い、この地シンガポールで築いた家族の物語を、孫娘の持つカメラは穏やかに綴る。

 

『さまようロック魂』 The Wandering Rock

監督:崔兆松(ツィ・チャオソン)
Cui Zhaosong
中国 / 2019 / 93分

1年前に相棒を亡くしたインディーロック歌手、ガンメーカー。公安に監視されながら体当たりのツアーを敢行し、矛盾だらけの現代社会で自由を咆える。

 

『ソウルの冬』 Winter in Seoul

監督:ソン・グヨン
Sohn Koo-yong
韓国 / 2018 / 25分

ホテルの一室で執筆をする青年、外では寒いソウルの街を人々が行き交う、ある一晩。小説『ソウル 1964年 冬』の語感を映画として解釈した五感の試み。

 

『ハルコ村』 Xalko

監督:サミ・メルメール、ヒンド・ベンシュクロン
Sami Mermer, Hind Benchekroun
カナダ / 2018 / 100分

監督の故郷クルドの村の男たちは欧州で働き生活している。忙しく手仕事をしながら、あれこれ話す女たちの日常の裏には、大きな「家族」の喜怒哀楽がつまっている。

 

◎ 特別招待上映作品

『自画像:47KMのスフィンクス』 Self-Portrait: Sphinx in 47 KM

監督:章梦奇(ジャン・モンチー)
Zhang Mengqi
中国 / 2017 / 94分

訥々と悲しみの半生を語る老女、絵を描く少女…。静かな村に流れる親密な時間が心に沁みる。インターナショナル・コンペティション『自画像:47KMの窓』の前作。

 

『美麗少年』 Boys for Beauty

監督:陳俊志(ミッキー・チェン)
Mickey Chen
台湾 / 1998 / 63分

同性愛の少年たちの社会との関わりと内面の苦闘を描いた、笑いと涙に満ちた作品。2011年にアジアの審査員で来形したミッキー・チェン監督を追悼。

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