ドキュメンタリー映画『世界一と言われた映画館』
『世界一と言われた映画館』劇場公開情報
山形国際ドキュメンタリー映画祭 2017「やまがたと映画」プログラムにて上映された、映画祭製作の山形県酒田市の伝説の映画館をめぐる証言ドキュメンタリー映画が、東京の有楽町スバル座を皮切りに全国配給されることになりました! チラシビジュアルもリニューアル! この機会にぜひご鑑賞ください。
40年の時を経て語られる、かつてグリーン・ハウスを愛した人たちによるトリビュート・フィルム!
『世界一と言われた映画館』
監督:佐藤広一/企画・制作:認定NPO法人 山形国際ドキュメンタリー映画祭/日本/2017/Blu-ray・DCP/67分
●上映劇場(2019年2月25日更新)
東京都 キネカ大森 2/28まで
大阪府 第七芸術劇場 3/30〜(2/24特別先行上映)
新潟県 シネ・ウインド 3/16〜3/29
福島県 フォーラム福島 3/22〜
長野県 シネマポイント 3/23〜
埼玉県 川越スカラ座 3/30〜4/5
埼玉県 深谷シネマ 4/7〜4/20
京都府 京都シネマ 4/6〜4/12
兵庫県 元町映画館 5/4〜5/17
栃木県 宇都宮ヒカリ座 6/8〜6/21
長野県 上田映劇 時期未定
広島県 横川シネマ 時期未定
他、全国拡大中!
映画評論家・淀川長治が絶賛したグリーン・ハウス
山形県酒田市には「世界一デラックスな映画館」と称されたグリーン・ハウスがありました。「サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ」の名台詞で有名な映画評論家・淀川長治さんがそのサービスの充実ぶりに「世界一!」と絶賛したことで知られています。
ビロード張りの椅子、回転扉、バーテンダーのいる喫茶スペース、観客のための送迎車など、至れり尽せりの映画館だったそうです。しかし、昭和51年、酒田市中心市街地が大規模に焼失した酒田大火の火元になったことで、楽しく映画を観た思い出と共にいつしか人々の記憶の中に封印され、その後グリーン・ハウスを語ることはタブーになってしまいました。
私たちは40年経った今だからこそ語れることがあるはずと、この数奇な運命を辿った映画館について、当時を知る人々の証言を集め、その姿を復元すべくドキュメンタリー映画を作りました。それが『世界一と言われた映画館 酒田グリーン・ハウス証言集』です。
調査の過程で出会った、グリーン・ハウスを愛する人たち。働いていたチケットガールや映写技師の方はもちろん、酒田大火の際、グリーン・ハウスの消火にあたった元消防士の方(『タワーリング・インフェルノ』が大好きで、なんとグリーン・ハウスで2回観ていたそう)や、大火で被災した酒田市出身の歌姫白崎映美さん、グリーン・ハウスからの出火を目撃した伝説のバーテンダーなど、当時を知る方々の貴重な証言が多数登場します。
8mmフィルムとして残されていた館内でのイベントの様子なども収録し、往時に想いを馳せながら華やかなりし時代の伝説の映画館を見ることができます。
ナレーションは大杉漣さんが担当
この作品でナレーションをつとめてくださったのは俳優の大杉漣さんでした。突然の訃報に日本全国が悲しみに暮れたのも記憶に新しいところ。映画ナレーションの最後のお仕事が本作でした。
そもそもこの映画に大杉さんが関わってくれたのは、さまざまな縁が結びついた結果でした。本作の監督である山形県天童市在住の映画作家・佐藤広一さんと大杉さんが約20年前に映画制作の現場で出会っていたこと。偶然にも山形放送のラジオドラマでグリーン・ハウスの支配人だった佐藤久一氏の役を大杉さんが演じており、以前からその人生に強い関心をお持ちだったこと。シネマパーソナリティーの荒井幸博さんが、たまたま大杉さんと佐藤監督、両者ともに親しい関係にあり、その間を取り持ってくれたこと。
どれか一つが欠けても実現しなかったこのナレーション録りについて、佐藤監督は「運命的な何かが働いたとしか思えない」と、当時の様子を振り返ります。
「グリーン・ハウスのような既に失われたものを映画にすると、どうしても資料的なものになりがち。でも大杉さんのナレーションが入ったことで、はじめて血が通った映画になった気がする」
佐藤監督は感慨深い表情でそう言いました。酒田大火の火元となったことで40年にわたりタブー視されてきたグリーン・ハウス。残された資料と当時を知る人たちの証言だけで映画を紡ぐのは至難の技だったそうです。しかし、大杉さんの落ち着いた温かみのある声が、作品に確かな彩りと存在感を与えてくれました。
ナレーション録りでは、台本上の「幸福」という言葉を「ここは“しあわせ”と読もう」と提案してくれるなど、作品に対して「とても気配りのある人だった」そうです。
こうした人柄が溢れた大杉さんの声があるからこそ、深い愛情と共に語られる失われた映画館の思い出は、観る者の心にしっとりと沁み渡り、それぞれの記憶の一部となって、語り継がれていくことになるのではないでしょうか。この映画が映画館という空間を愛する全ての人たちに届くことを期待しています。
(文責:山形映画祭事務局)