1月11日[金]〈YIDFF 2017 アンコール 10:韓国、生活の柄〉
新年一発目の金曜上映会は、2017年の山形国際ドキュメンタリー映画祭で上映されたコンペ部門の作品から選りすぐりのものを上映するアンコールシリーズ第10弾! 今回は「アジア千波万波」部門の中から、ソン・ユニョク監督の『人として暮らす』とチョン・ジェフン監督の『ウラーッ!』を上映します。
『人として暮らす』14:00- 19:00-(2回上映)
山形国際ドキュメンタリー映画祭 2017 アジア千波万波 奨励賞受賞作品
監督、撮影、編集:ソン・ユニョク/韓国/2016/69分
作品紹介:
生活困窮者が身を寄せ合って暮らすソウルの一角にある簡易宿泊所チョッパンが再開発で消えようとしている。同棲を始めたばかりのイルソとスンヒ、生活保護を受けるために苦難するナムスン、うつ病を抱えるチャンヒョン。ここに凝縮されて見える、まるで人を追い込むためにあるかのような社会のなかで、それぞれが支援団体とも関わりながら人らしく生きる道を模索する。監督はそこで生活し、素朴な問いを発しながら、社会保障制度の歪みも浮かび上がらせる。
監督のことば:
韓国で生まれ育った。街でホームレスの相談に乗る活動をしながら、彼らの口になりたいと思った。それは、彼らは街で生きて死んでいくが、その苦しみの声が社会に届いていなかったからである。
韓国社会の悲惨な貧困を目の当たりにして、大きく驚き、胸を痛めていた。ありえないと思われたことが実際にこの国では起きている。
終わりの見えぬ貧困の鎖を見て、その鎖を錆びつかせたい。あるいはそのもつれを解きほぐすことができるよう何とかしたいと思う。我々のカメラが彼らの口になる時、小さな希望が始まると信じている。
人びとは今もなお路上で死んでいる。だが制度は、貧困に終わりがないかのように、事態を永続させようとする。
貧困の最前線に位置する路上にあって、「ドキュジン(人)」はふらつくような歩みで人びとを記録していく。
ソン・ユニョク
『ウラーッ!』 15:30-(1回上映)
山形国際ドキュメンタリー映画祭 2017 アジア千波万波上映作品
監督、撮影、編集:チョン・ジェフン/韓国/2011/75分
作品紹介:
ビリヤード場で飲み物を運び、ガソリンスタンドで洗車し、黙々と働く男の日常生活をストーカーのように捉えるカメラは、観る者の視線と感覚を支配しようとしている。人と人が交わる感触、交わす言葉が一切排除された世界では、唯一「話す」機械音が生活のリズムを脳内に刻む。一人の人間の肉体が、個体性を少しずつ侵食されながら、同時に氾濫の時を伺っているのか。不穏な空気とともに、叫びがこだまする、ある男の家と仕事の往復。
監督のことば:
私は名もなく、アイデンティティもない不思議な力を映画に入れ込もうと努力した。そのため、登場人物の表情に表れる社会的関係、感情の変化、象徴性、性別などが表面化しないよう、作品から削ぎ落とそうとした。実際、私たちの生活は、体系的な枠組みだけでは捉え切れないことが多い。したがって、お腹がグウグウ鳴る音や夜空の雷、寝言といった感覚がつくり出す新たな道に沿って行くことしかできなかった。やがて、その道はフィクションに繋がることになる。こうした想像的な枠組みがつくり出した人物の表情を、ドキュメンタリーのような瞬間として捉えていくと、その力は現実にまで影響を与えることができると考えた。人物の生々しい表情が持つ、永遠に破壊していくような力を暖かく発揮できることを願いながら作品を作った。本作はSFホラー映画であり、またドキュメンタリーであるとも言える。
チョン・ジェフン
[会場]山形ドキュメンタリーフィルムライブラリー試写室
[料金]鑑賞会員無料(入会金・年会費無料)
[主催]認定NPO法人 山形国際ドキュメンタリー映画祭
[問い合わせ]電話:023-666-4480 e-mail:info@yidff.jp