7月26日の金曜上映会〈YIDFF 2017 アンコール17:家と街〉

今回はご好評いただいているアンコールシリーズの第17弾。〈家と街〉というテーマで、山形国際ドキュメンタリー映画祭 ’95 インターナショナル・コンペティション上映作品、マリナ・ゴルドフスカヤ監督の『アルバト通りの家』と、山形国際ドキュメンタリー映画祭 2017 アジア千波万波上映作品、陳君典(チェン・ジュンディェン)監督の『中国街の思い出』を上映します。家や街に集積した記憶の数々。ご期待ください。

『アルバト通りの家』 14:00-、19:00(2作品2回上映)

『アルバト通りの家』

山形国際ドキュメンタリー映画祭 ’95 インターナショナル・コンペティション上映作品

監督:マリナ・ゴルドフスカヤ/ロシア/1993/59分

作品紹介:

20世紀ロシアで、「アルバト通りの家」に住んでいた人々の話。このアパートは1900年初頭に建てられた当時は裕福で特権階級の家庭のためのものだったが、1917年の革命後は異なった背景をもつ人々のための集合住宅と化してしまい、彼らは否応なしに共同生活を強いられた。歴史的フィルムと「アルバト通りの家」の以前の住人達―何人かは98歳になっている―の回顧録により素晴らしい「家」の話は蘇る。ある住人は「ドアをドンドン叩く音が聞こえて毎日のように誰かが逮捕されていったよ」と語る。ナレーターは言う。「ここ70年の間、ロシア全土がこのアパートのようだったんだ。全くおかしな家族だよ」。監督は’89年の審査委員。

 

『アルバト通りの家』

『中国街の思い出』 14:00-、19:00(2作品2回上映)

『中国街の思い出』

山形国際ドキュメンタリー映画祭 2017 アジア千波万波上映作品

監督:陳君典(チェン・ジュンディェン)/台湾/2016 /30分

作品紹介:

台南市で1970年代に建設された住宅と商店街が同居する「中国城」が取り壊される。息をひそめながらその日を待つ建物で、監視カメラは開かないシャッターを映し続け、犬は定位置に寝転び、カラオケ店ではモニターが光り、マイク音がくぐもる。廃墟のような建物の呼吸とかつての住人の記憶が呼応し、亡くなった人を偲ぶように住人が語るのは、かつて界隈が賑わっていた頃の様子であり、その人の人生、この街の歴史の一幕でもある。

監督のことば:

ある建物の存在は、時間と空間という背景の移り変わりとともに、動的かつ有機的な状態として現れるだろう。繁栄から荒廃へ、整備された状態から崩壊へと向かい、さまざまな外在的要因(政府の政策、都市計画)と内在的要因(居住者の使用状況)によって、その運命の向かう方へ絶えず引っ張られていく。しかし、結果的にどのような方向に行ったとしても、そのプロセスにおいて、建物自身が自らの歴史的価値を生むのであり、この歴史的価値は、建築物が廃墟化したり、建て替えられたり、取り壊されたりすることで消し去られることはないだろうし、消し去ってはならないはずだ。

だからこの作品は、動的映像を主とせず、むしろ大量の写真を表現の主体としている。動的映像は常に時間軸に順応して、積み重なり進んでいくことで形成される叙事であり、写真は時間軸のある一面だけを切り取り、サンプリングしたものだ。だが、物理的な時間の凝固は、見る者の心の奥にある時間の感覚をなお一層撹拌する。私は、ここにひとつの記念碑を建て、映像をその石柱に見立て、人々の語りをその碑文とし、失われようとする場所の景観を記念しようと試みた。

陳君典(チェン・ジュンディェン)

 

『中国街の思い出』

 

[会場]山形ドキュメンタリーフィルムライブラリー試写室
[料金]鑑賞会員無料(入会金・年会費無料)
[主催]認定NPO法人 山形国際ドキュメンタリー映画祭
[問い合わせ]電話:023-666-4480 e-mail:info@yidff.jp