Yearly Archives: 2013
プログラム:ヤマガタ・ラフカット! 「voyage」
ヤマガタ・ラフカット!は今年の山形国際ドキュメンタリー映画祭から始まった新しい取り組みだ。名前のとおり監督が制作途中の作品を1時間にざっくりまとめてカットしたものを発表し、上映後、観客とともに議論を展開し、ともに映画を作って行くというもの。
山形美術館の3階にある会場に足を踏み入れると上映準備の真っ際中。スクリーンには編集用ソフトウェアの画面が投影され、映画がまだ制作の途上にあることが分かる。これから上映される映画について、またラフカットという企画自体についてもあまり予備知識を持たないままイベントに臨んだ。「1時間の尺に収めたことで作品はどういった印象になるのだろうか」「トークセッションでは、一体どのような議論がなされるのだろうか」漠然とした疑問を持ちながら、上映が始まった。
「voyage」は監督の池田氏と親交が厚いワールドミュージックの3人グループ「馬喰町バンド」のニューヨーク公演と、メンバーのひとりである土生(はぶ)氏がインドネシア人の妻と会話する日常を主軸としながら、突如名も無いカップルの同棲生活が終焉を迎える様(このパートのみフィクションである)が挿入され、3つの視点がそれぞれ唐突に入れ替わりながら淡々と進んで行く。バンドメンバーの笑顔が眩しく陽気なミュージックが奏でられる瑞々しいシーンに対し、同棲カップルのシーンはあてどなく不毛の会話が交わされ続け、淀んだ雰囲気が感じられる。
上映後のトークセッションではこのフィクションの部分についての意見が観客から多く出された。
「夫婦とカップルをもっと対比させて映画的なオチをつければもっと面白かった」
「フィクションのパートが構成に入っているとドキュメンタリーとして見られない」
池田監督は自身のプライベートで感じた、男女関係が気付かないうちに緩やかな終わりに向かって行く様を表現したかったと語った。タイトルである「voyage」は航海を意味するが、常にどこかへ向かって動いていることは良いことばかりではない。航海するということは漂流することに似ている、と。
監督の言葉を聞きながら、ラフカットという企画そのものがある意味仕組まれた映画の漂流なのではないかと考えた。観客と制作者たちに委ねられた議論はあてどない礼賛と批判と所感を行ったり来たりしながら深まりを見せて行く。海と同じように荒波があれば凪があり、それでもいつかはどこかにたどり着く。
「監督にとってのドキュメンタリー映画って何ですか?」
議論の終盤観客が投げつけたこの質問に鳥肌が立った。1時間半という時間でここまで本質的な議論に行くつくのか。回答に悩む監督の横顔を眺めながら、この新しい企画が山形国際ドキュメンタリー映画祭の中で定着し、長年続けられていくとしたら一体どこに辿り着くことができるのだろうと楽しみで仕方なかった。
執筆者:編集部 梅木壮一
プログラム:6つの眼差しと<倫理マシーン> フェアユース運動の画期的な成功
世界人権宣言第27条には、下記の条文が盛り込まれている。
- すべて人は、自由に社会の文化生活に参加し、芸術を鑑賞し、及び科学の進歩とその恩恵とにあずかる権利を有する。
- すべて人は、その創作した科学的、文学的又は美術的作品から生ずる精神的及び物質的利益を保護される権利を有する。
前者が自由な創作を約束し、後者はその保護が謡われており、表裏一体の事柄が記されている。プログラム「6つの眼差しと<倫理マシーン>」最初のセッションでは、ゲストのゴードン・クイン監督がこの文章を引き合いに出しながら、自身が中心人物のひとりとなっている「フェアユースムーブメント」について語った。
「フェアユース」とは他に権利者が存在する映像や音楽を、クリエーターが権利者の許諾を得ずに使用した場合でも、それが自分の作品に必要不可欠で最低限の尺の利用であれば、「公正な利用」であると見なすことである。
映画の一場面で、黒人の少年の誕生日パーティーが映し出される。ケーキのロウソクを吹き消す彼を囲む家族や親類が、一斉にあの歌を口ずさむ。「Happy birthday to you!」。
米国のヘルスケア業界批判のために製作されたドキュメンタリーでは、第二次世界大戦後傷病に苦しむ兵士達を最初のターゲットに、医療関係の巨大企業がどのようにして急成長してきたか描くために、過去の古い雑誌や画像を使ってその経緯を説明する。
いずれもドキュメンタリー映画ではよくあるシーンだが、映像メディアに様々な関係者が存在し、権利を保有する大企業がその管理に敏感になっている昨今、映像制作者はいちいち権利者へ許諾をとらなければならない。クイン監督は自身が監督した映画「フープ・ドリームズ」の中で、先述の「ハッピーバースデイ」(100年前に作曲されながら今も著作権で保護されている)をほんの数秒挿入するために、数千ドルの出費を余儀なくされた。
権利者から許諾を得ることが、予算をかけないドキュメンタリー映画の制作に支障を来すレベルになってきたことで、クイン監督は1990年代から同業の監督やインディペンデントの映画制作会社とともに立ち上がり「フェアユース」という概念の世間への浸透させるべく運動を展開した。そして、2005年「公正な利用の最前な運用についてのドキュメンタリー映画作家の声明」と題した文章を発表し「フェアユース」の定義を定めた。
「我々は法を変えることも、法廷に立つこともしなかった。この声明を発表したこと自体が大きなバックアップになった」とクイン監督は語った。自ら数多くの弁護士などと面会しフェアユースに対する理解を広めていった。
「民主主義国家において映像制作をするため、映像・音楽のフェアユースは必要だ」。クイン監督は力説する。民主主義を標榜する国家は自由闊達な創作およびその批判が可能でなくてはならない。批評や批判を目的に制作されるドキュメンタリー映画はその急先鋒であり、映像・音楽の権利問題によって、それが阻害されてはならない。
著作者・著作物の保護と縛られる事のない自由な表現。互いに正しさを主張する権利と権利の見えない戦いは始まったばかりだ。
執筆者:編集部 梅木壮一
●変更 Correction:
山形美術館2 Yamagata Museum of Art2
ともにある Cinema with Us 10月14日10:30~ 14th October 10:30~
「つむぐ-閖上中学校その言葉の記憶-」の上映終了時間が11:17に変更になります。
TUMUGU-Students of Yuriage Junior High School will finish at 11:17 .
10月13日(日)
今日は映画祭ゲストとファンの交流の場、香味庵クラブに取材です。
22:00からオープンする、お蔵を改装した和風レストラン。
ゲストもお客さんもスタッフも関係なく、みんなで映画について語りあえる空間です。500円でおつまみとお酒をもらって、さっそく中へ。
香味庵の入り口で日本酒を嗜むかわいい女性を発見!さっそく取材です!
Q: どちらからいらしたのですか?
A東京の杉並区からきました。
Q: いつ山形に到着したのですか?
A: 夜行バスで13日の朝5時に到着しました。14日の夜にまたバスで帰ります。
Q: とってもハードなスケジュールですね。今日は何の映画を観ましたか?
A: 『殺人という行為』を観ました。今日朝からずっと映画を観ていたのですが、夜行バスで朝5時についたので、暗い映画館は少し辛かったです・・・。
でも『殺人という行為』だけはしっかり観たいと思ったので、眠気覚ましのドリンクを飲んでから観ていました。
Q: 東京事務局の髙木さんのお友達だったのですね? また山形で会えて、どう思いますか?
A: すごく嬉しいです。高木さんとは大学の映画学科の友だちで、2年前の映画祭では、一緒に観てまわっていました。東京ではたまに会ったりしますね。
Q: では今回で2回目の参加になるのですね?
A: そうですね。
Q: 山形で何か美味しい物は食べましたか?
A: まだコンビニで売っているご飯しか食べてません。でも「牛タン塩饅頭」みたいなものを食べました。「ご当地かな!?」と、思わず買いました。コンビニで感じる山形です。
Q: 次回の映画祭は参加する予定ですか?
A: まだ分かりませんが、また山形でお会いしたいですね!
山形国際映画祭はなんども参加する人も多く、香味庵では2年ぶりに会う人も沢山いると思います。取材させていただいた方は偶然にも、映画祭スタッフ髙木さんのお友達でした。人の縁を感じる暖かい映画祭です。
香味庵クラブは16日(水)まで開いてます。
みなさんもぜひ行って、日本酒と芋煮を食べながら、ゲストやお客さんと語りあってください。
今回の取材に応じてくださったのは、東京からいらっしゃったでした清水馨さんでした!
(写真左から清水馨さん、髙木愛さん)
取材・構成 飯田有佳子
スカパー!で放送中のチャンネルとタイアップして、各チャンネルが自信を持ってお届けるドキュメンタリー作品の上映、映画監督を招いてのトークショーなど様々なイベントを開催します。
On 14th and 15th October, Sky Perfect TV presents some screenings of the films and the documentary programs distributed by its channels, and also special talks.
<上映&トークショー情報>
10月14日(月)山形グランドホテル 入場無料
14th October Yamagata Grand Hotel admission free
10:00~ 「犬と命の物語~どうぶつと生きる社会~」Inu to Inochi no Monogatari
12:00~ 「氷河消失の記録」Hyoga Shoushitu no Kiroku
13:30~ 「南アフリカの奇跡~民主化への道のり~」Minami Afrika no Kiseki
15:30~ 「日本解放戦線 三里塚の夏」上映後トークショーあり
Summer in Narita + Talk
ゲスト:想田和弘(映画監督)、松江哲明(映画監督)
Guest: Soda Kazuhiro (director),Matsue Tetsuaki (director)
聞き手:北小路隆志(映画批評家)
Moderator: Kitakoji Takashi (film critic)
20:00~ 日本映画監督協会・スカパー!共同企画 特別対談『ドキュメンタリー映画の地平線』
Directors Guild of Japan & Sky Perfect TV present
Talk Show: The Horizons of Documentary
司会:辻よしなり
Moderator: Tsuji Yoshinari
出演:監督:原一男、崔洋一、ヤン・ヨンヒ、入江悠
Guest Directors: Hara Kazuo, Sai Yoichi, Yang Yong-hi, Irie Yu
10月15日(火)山形美術館 映画祭入場券(有料)が必要です。
15th October Yamagata Museum
17:30~(changes)「現認報告書 羽田闘争の記録」上映後トークショーあり
A Report from Haneda +Talk
ゲスト:阿部・マーク・ノーネス(ミシガン大学教授)、足立正生(映画監督)
Guest: Abé Mark Nornes (professor at Michigan Univ.),Adachi Masao (director)
聞き手:北小路隆志(映画批評家)
Moderator: Kitakoji Takashi (film critic)
詳細はこちら:http://www.skyperfectv.co.jp/special/eigabu/event/
10月12日(土)
映画祭の中でも注目されているプログラム『未来の記憶のためにークリス・マルケルの旅と闘い』は山形市民会館小ホールで上映をしています。
12日はポンピドゥーセンターのキュレータのエティエンヌ・サンドランさんによる講演「猫頭の男」もあり、多くの観客で賑わいました。
作品の上映が一段落し、外で休憩するお客さんの中から映画好きのにおい漂う青年を発見しました。クリス・マルケルを見終わったばかりの彼にどこから来たのか突撃!
Q: 今日はどちらからいらしたんですか?
A: 東京からきました。東京の中井というところです。
Q: 山形国際ドキュメンタリー映画祭は初めてですか?
A: いいえ、4年前に初めてきたので、今回が3回目です。
Q: お一人でいらしたんですか?
A: 友達とふたりできました。
Q: 映画関係のお仕事をされているのですか?
A: 学校では、映画の勉強をしていましたが、今は映画とは違う仕事をしていますが。むりやり仕事の休みをとって来ました。昨日山形に到着して、月曜日に帰ります。
Q: 今回の映画祭で注目しているプログラムや作品、監督はいますか?
『殺人という行為』を今日は鑑賞しました。
あと、今回クリス・マルケル特集は注目していますね。特に明日の『サン・ソレイユ』は観たいと思っています。
今日観たクリス・マルケルの作品もおもしろかったです。昨日もクリス・マルケルの作品を観ていたのですが、かなり色々な事をやっているなという印象を受けました。いまいちまだクリス・マルケルの全体像を掴めない感じですが。幅広いなという第一印象でした。今からは『なみのこえ』を観に行こうと思っています。
Q: 山形でなにかおいしいものは食べましたか?
A: まだ特になにも食べていません。なにかオススメはありますか?
香味庵にもまだ行ったことがありません・・・。
香味庵はぜひぜひ行ってください。
山形にも美味しいものいっぱいですよ。
たまこん、おでん、芋煮、日本酒・・・。
映画自体も、もちろん楽しんでもらいたいですが、ぜひ美味しいものも堪能してもらいたいですね。
突然の取材に快く応じてくださったのは、東京都からいらっしゃった村山敏郎さんでした!
取材・構成 飯田有佳子
●変更 Correction:
山形美術館2 Yamagata Museum of Art2
やまがたと映画 Yamagata and Film
10月13日10:00~ 13th October 10:00~
「幻灯の映す家族」の上映作品は字幕なしの上映になりました。
In the screenings of the program “Images of Family in the Magic Lantern,” english subtitles will not be presented.
フィルムの中のやまがたの作品詳細は以下になります。
Yamagata in Film will show these works as below:
山形市民会館大ホール Yamagata Citizen’s Hall ( Large )
フィルムの中のやまがた1 Yamagata in Film 1 10月14日10:00~ 14th October
・山形市広報ニュースNo.1~3 Yamagata City Newsreel No.1~3
・開けゆく峠路 A New Mountain Route
・のびゆく山形 A Greater Yamagata
フィルムの中のやまがた2 Yamagata in Film 2 10月15日10:00~ 15th October
・山形市広報ニュースNo.5~7 Yamagata City Newsreel No.1~3
・私たちの施設 Our Institutions and Facilities
・笹谷トンネル Sasaya Tunnel
・県政ニュース 新しい町・新しい村 Prefectural News: New Cities, New Towns
山形市民会館小ホール Yamagata Citizens’ Hall ( Small )
未来の記憶のためにクリス・マルケルの旅と闘い 10月13日14:30~
Memories of the Future Chris Marker’s Travel and Trials 13th October 14:30~
「空気の底は赤い」は、上映終了が17:30に変更になります。
A Grin Without a Cat will finish at 17:30
●混雑が予想される作品がございます。
Due to heavy interests,screenigs may not be available:
フォーラム3 Forum3
日本プログラム Perspectives Japan
「うたうひと」10月13日10:00~
Storytellers 13th October 10:00~
フォーラム5 Forum5
アジア千波万波 New Asian Currents
「愛しきトンド」10月13日14:00~
Tondo, Beloved: To What Are the Poor Born? 13th October 14:00~
「チークを辿る道」10月13日20:00~
Jalan Jati-Teak Road 13th October 20:00~